電子カルテとは? オンプレとクラウドの違い、導入費用、選定時期までを解説

電子カルテとは、診療内容を紙カルテに記入する代わりに、コンピュータ上で編集・管理し、診療録として保管・参照できるシステムを指します。多くの場合、医療に伴う色々な作業、たとえば紹介状・処方箋・検査データ管理・その他諸々をサポートします。

近年ではクリニック開業に際して、電子カルテを導入するケースが増えてきており、その普及率は年々伸びています。

この記事では、電子カルテの現状とともに、その基本的な内容から導入費用、選定時期などを解説していきます。

目次
  1. 電子カルテの普及率 診療所の半数近くが導入済み
    1. 診察外の手間を軽減 電子カルテのメリット
  2. 電子カルテシステムの種類 「オンプレミス型」と「クラウド型」
    1. オンプレミス型
      1. オンプレミス型電子カルテのメリット・デメリット
      2. オンプレミス型電子カルテの費用
    2. クラウド型
      1. クラウド型電子カルテのメリット・デメリット
      2. クラウド型電子カルテの費用
  3. 厚労省ガイドラインが定めた「電子保存の三原則」
    1. 「真正性」「見読性」「保存性」の意味
  4. 電子カルテとレセコン(レセプト)の違いとは
    1. 電子カルテ・レセコン一体型
    2. 電子カルテ・レセコン分離型(連動型)
  5. 開業半年前から始めたい! 電子カルテの選定時期

電子カルテの普及率 診療所の半数近くが導入済み

参考:厚生労働省「医療施設調査」平成29年

政府は2020年度までに、400床以上の一般病棟における電子カルテの全国普及率を90%まで引き上げるという具体的な目標を掲げており、平成29年(2017年)に厚労省が発表したデータでは、400床以上の一般病院の電子カルテ普及率は85.4%にまで及んでいます。

参考:内閣府「「日本再興戦略」改訂 2015」平成27年

同データでは、一般診療所における電子カルテの普及率は41.6%と右肩上がりで、今後も普及率の伸びが期待されています。

診察外の手間を軽減 電子カルテのメリット

特にこれから新規開業する場合、ほとんどの診療所が電子カルテを導入しています。なぜなら、紙カルテと比較した時に、電子カルテならではのメリットが多く存在するからです。

紙カルテでは長く診療を続けていくとその分、カルテの保管・収納スペースが必要となってきますが、電子カルテはコンピュータやクラウド上にデータを保存するため、大量の患者情報も省スペースで保管・管理することができます。

また、膨大なカルテデータの中から必要な情報を検索して、患者情報をすぐに呼び出せたり、キーボード操作での素早いカルテ記入、誰にでも読める文字の入力、受付事務とのスムーズな情報のやり取りなどが可能で、時間効率を上げられます。

レセコンと連携することで保険請求手続きなど、診察以外の業務の手間が削減され、診察に集中することができます。

電子カルテシステムの種類 「オンプレミス型」と「クラウド型」

現在運用されている電子カルテシステムには大きく分けて、オンプレミス型とクラウド型があります。それぞれの特徴について、押さえておきましょう。

オンプレミス型

オンプレミスのイメージ図
オンプレミスのイメージ図

オンプレミス型電子カルテでは、サーバーコンピュータを自院内に設置し、データの保存・管理を行います。自院内のコンピュータ間をローカルネットワークで接続し、院内のみで完結したシステムになっています。

オンプレミス型電子カルテのメリット・デメリット

オンプレミス型電子カルテは大病院をはじめ、これまで医療機関で広く使われていたため、一般的にベンダーによるサポートが手厚いとされています。さらに、専門的な機能や高度な医療機器との連携といった機能を多く備えてる場合があるなどのメリットがあります。

ただし自院にサーバーがあるため、メンテナンスやシステムのバージョンアップはその都度自身で行ったり、ベンダーによる訪問対応などが必要です。

デメリットとして、オンプレミス型では院内にサーバーコンピュータや専用端末を設置するスペースが必要です。また、故障やトラブルがあった場合には、自院にサポートが来るのを待たなくてはなりません。

さらにオンプレミス型の機材やシステムは5〜7年程度のリース契約であることも多く、実際に電子カルテを運用してから使い勝手が悪かった場合などは、乗り換えに解約料や手間がかかることも。

そのほか、カルテデータは自院のサーバーコンピュータに保存されているため、データのバックアップといったDR(災害復旧)対策を自発的に施す必要があります。

オンプレミス型電子カルテの費用

オンプレミス型電子カルテの場合、コンピュータやネットワークシステムを揃える必要があるため、初期費用としてクリニックでは約300〜500万円程度かかるとされています。

また、これにシステムアップデートにかかる更新費や保守費用といったランニングコストがかなりかかります。

クラウド型

クラウドのイメージ図
クラウドのイメージ図

クラウド型電子カルテは、自院内にデータの処理や保存をするサーバーを設置するオンプレミス型と違い、インターネットを通じてクラウド事業者が持つサーバーに分散してカルテデータが保存・管理され、そのサーバーからデータを呼び出して利用します。

「クラウド」の仕組みを理解しておきたい場合は、「【図解】クラウド型電子カルテの「クラウド」の意味とは? 基本的な仕組みから解説」の記事を読んでおくことをおすすめします。

クラウド型電子カルテのメリット・デメリット

クラウド型電子カルテは、コンピュータとインターネット、Webブラウザがあれば場所や端末を選ばずに利用可能で、初期費用や稼働費はオンプレミス型と比べて安価です(電子カルテによっては、Webブラウザではなく専用ソフトを組み込む必要があります)。

また、電子カルテシステムのアップデートや不具合の修正などはクラウド側で電子カルテ事業者が行うため、クリニック側の手間は基本的にかかりません(ただし、クリニック側のコンピュータのメンテナンスについては通常のお手持ちのパソコンと変わりません)。

加えて、一般的なクラウドサービスではデータを保存するサーバーを分散させるなどして、DR対策を講じています。そのため、もしクリニックが災害などに遭ってしまったとしても、データ自体は別の場所に保存されているため、カルテデータは守られています。

デメリットとして、一般的なクラウド型電子カルテでは、事業者が提供する設定やオプション以外のカスタマイズはできません。そのため、規定の範囲内で電子カルテを運用していく必要があります。ただし、今後はクラウド型の普及に伴い、オンプレミス型に劣らず専門性の高い機能を備えた製品が登場することも期待されています。

また、インターネットを介したシステムなので、インターネット環境がなければクラウド型電子カルテは利用できません。万が一、インターネットが使えない状況に陥っても対処できるような仕組み作りが求められます。

クラウド型電子カルテのメリットやデメリットについては、「クラウド型電子カルテのメリット・デメリットを、電子カルテ『NOA』開発者が解説」という記事にて、以下のような項目に分けて詳しく説明しています。ぜひご参照ください。

【メリット】
1:メンテナンスの作業時間やトラブル対応の手間が減る
2:インターネット環境があればどのパソコンからでもアクセスできる
3:省スペースで電子カルテを運用できる
4:低料金で導入・運用できる
5:他システムと連携し、複数のデータをもとに診察できる

【デメリット】
1:インターネット環境が切れてしまうと、カルテ入力に支障が出る

クラウド型電子カルテの費用

クラウド型電子カルテでは、初期費用・月額料金が共に無料のものから、初期費用は数十万円程度、月額料金は1万円前後〜数万円といったものが多く見られます。これに電子カルテを使用するユーザー数や外部機器連携の追加、更新費用など、利用スタイルによって各種追加費用がかかる場合があります。

厚労省ガイドラインが定めた「電子保存の三原則」

ここで、電子カルテに必要とされている要件について簡単に説明します。

そもそも日本において、電子カルテが普及し始めたのは1999年以降。

当時、厚労省が「法令に保存義務が規定されている診療録及び診療諸記録の電子媒体による保存に関するガイドライン等について」や「診療録等の電子媒体による保存について」を発表し、正式にカルテ情報の電子媒体への保存が認可されました。

参考:厚生労働省「法令に保存義務が規定されている診療録及び診療諸記録の電子媒体による保存に関するガイドライン等について」平成11年

このガイドラインの中で、電子カルテは「真正性」「見読性」「保存性」という、いわゆる「電子保存の三原則」を遵守するよう求められました。

「真正性」「見読性」「保存性」の意味

「真正性」とは、データの改ざんや消去を防止し、作成した責任者を明らかにすることであり、その確保を行う必要があります。

「見読性」は、保存された情報を必要に応じて肉眼で読めるようにすることで、診療や監査などの際に差し支えがないようにしなければなりません。

「保存性」は、法令が定める期間中は復元が可能な状態で保存することです。設備の劣化やヒューマンエラー、コンピュータウィルスの影響など、データ消失への対策を施すよう、求められています。

参考:厚生労働省「診療録等の電子媒体による保存について」平成11年

つまり、「電子保存の三原則」は「電子カルテは誰にでも読みやすく、作成者を明確にした上で、データが改ざんされたり消去されないよう、一定期間保存しておかなければならない」と掲げているのです。

電子カルテとレセコン(レセプト)の違いとは

電子カルテを運用する上で、診療報酬の算定に必要なレセプトコンピューター(レセコン)の存在は欠かせません。

レセプトとは「診療報酬明細書」のことで、医療機関では毎月10日までに診療報酬請求を行っています。

そして、レセプトを作成・提出するための医事会計システムがレセコンです。

レセコンの登場によって、診療報酬の算定やレセプト作成時の入力不備が自動的にチェックされるなど、ミスが少なく効率的なレセプト請求が可能となりました。現在、医療機関においてレセコンの普及率(施設数ベースでの電子レセプト請求におけるオンラインの割合)は61.3%にまで上り、広く普及しています。

参考:社会保険診療報酬支払基金「レセプト請求形態別の請求状況(令和2年2月分)

代表的なレセコンとしては、かつて日本医師会が展開し、現在は日本医師会ORCA管理機構が手がけるORCAプロジェクトで開発されている国内シェアトップクラスの「日医標準レセプトソフト」(通称:日レセ)があり、日レセは幅広いメーカーの電子カルテと連携できることでも知られています。

近年では、電子カルテとレセコンが組み合わされることで、診療から会計までがスムーズに行われています。これまではレセコンもオンプレミス型が主流でしたが、クラウド型レセコンも登場し始め、先述のクラウド型のメリット電子カルテとレセコンの連携形式には、一体型と分離型(連動型)があり、以下のような違いがあります。

電子カルテ・レセコン一体型

電子カルテ・レセコン一体型は、その名の通り、電子カルテとレセコンが合わせてひとつのシステムとなっています。そのため、画面を切り替える必要もなく、電子カルテからシームレスにレセプト処理をすることができます。

また、電子カルテ上でレセコン側の機能を使い診療費の簡易的な計算ができたりといった一体型ならではの強みがあります。

反面、一体型ではメーカー独自のレセコンが組み込まれているため、使い勝手や機能面といった質はまちまちです。自動計算の精度や操作導線などの基本的な部分だけでなく、実際に医事課スタッフが扱えるかどうかも含めて検討するといいでしょう。

電子カルテ・レセコン分離型(連動型)

電子カルテ・レセコン分離型の場合、各事業者が提供する電子カルテと、レセコンである「日レセ」(ORCA)などが連動しているケースが多いです。

分離型の利点は、電子カルテとレセコンが別のシステムとなっているため、どちらか片方にシステム障害が起こった場合でも、もう片方の業務を行うことは可能です。

また、ORCA連動型の電子カルテシステムは無床診療所対応のものだけでも40種類弱に及び、選択肢の豊富さも魅力です。自分に合った電子カルテシステムを使いながらスムーズな会計業務を可能にしています。

「日レセ」は信頼性が高く、多くの医療機関で使われているため、操作に慣れた受付事務スタッフを見つけやすいというのも、大きなメリットといえます。

デメリットとしては、電子カルテとレセコンが別のシステムなので、どちらも扱えなくてはいけません。習得までの時間を考慮に入れて、開業時には両方のシステムを過不足なく扱えるようにしておきましょう。

開業半年前から始めたい! 電子カルテの選定時期

新規開業で電子カルテを導入する場合、開業の少なくとも半年前をめどに検討を始めるといいでしょう。

この時期は一般的に医療・検査機器の選定を開始する時期でもあり、電子カルテの検討と同時に進めることで、導入予定の機器と電子カルテが連携しているかを確認できます。

もし導入する医療機器が電子カルテと連携していない場合でも、電子カルテ事業者に問い合わせると連携対応してくれるケースもあります。機器連携には期間や費用を要する場合もあるので、電子カルテは余裕を持って選定するのをオススメします。

大橋克洋

電子カルテ「NOA」開発者 | 大橋克洋

大橋産科婦人科院長
(公益社団法人)東京都医師会で医療情報担当の理事や、(公益社団法人)日本医師会で医療IT検討委員会委員長を務めるなど、医療ICT化や電子カルテの普及に尽力。


他の関連記事はこちら

CLIUS(クリアス )