【開業医にインタビュー:福田正博医師】患者満足度の高いクリニックを経営する秘訣

クリニックを開業してから、患者さんに長く通い続けてもらうには「患者満足度」が大切です。

医師のリアルな開業体験談をお届けする「開業医にインタビュー」企画の第二弾は、1996年にクリニックを開業し、20年以上の経営歴を持つ福田正博医師にご協力いただきました。

患者満足度の高いクリニックを経営する方法、患者さんと接するときのポイントなど、実践ベースでのノウハウを多数いただきました。

ぜひ、クリニック運営の参考にしてみてください。

「患者満足度の高いクリニック」経営のためのルールを教えてください

クリニックを開業して24年の私の経験からいうと、2つあると思います。

患者さんのニーズを把握する

まずは、目の前の患者さんの状況・要望を把握することです。当院では、患者さんへの丁寧なヒアリングを行っています。

このルールは「患者中心の医療の技法」(Patient-centered clinical method;PCCM。1970-90年代にかけカナダ・ウェスタンオンタリオ大で開発)という、患者一人ひとりの事情や考えに合わせたケアを提供する概念にのっとっています。

それぞれの患者さんに適切な方法を提案するには、その患者さんのことをよく知る必要があると考え、じっくりコミュニケーションをとりながら日々診療しています。

医師は「指導する先生」ではなく「提案するサポーター」だと心がける

もう1つのルールは、糖尿病患者を相手にした場合、医師は「指示する先生」ではなく「提案するサポーター」だという意識を持つことです。

生活習慣を変えるのは、医師や看護師ではなく糖尿病の患者さん自身です。だから、患者さんのニーズを踏まえた上でベストな方法を提案しています。

例えば海で溺れている人を迅速に力ずくで助けるのが救急医療だとするなら、糖尿病患者を相手にしたケアは、川で泳いでいる人を岸から応援しているような状態です。「流れが急だからもっとキックした方がいいよ」「左に進んだ方が安全だよ」と伝えていく。

私は、どうすれば患者さんがいい方向に歩んでいけるか、生活習慣が改善しやすくなるかを考えてサポートしています。

患者満足度を重視するようになったきっかけは何ですか?

勤務医として働いていた時も意識していましたが、開業してからより重要だと気づきました。

過去を振り返ると、大学病院等の大規模な医療機関に勤めていた時の患者さんは、私の話をとてもよく聞いてくれました。でもそれは私がすごいから、偉いからというわけではなく、私の後ろにある「大学病院」という看板のおかげだったんです。

それが中規模な病院に移ったら、大学病院の頃とは患者さんの層も違いますし、これまでと同じ言い方をしても反応が違いました。

開業したら今度は「町医者」ですから、さらに患者さんの反応も変わります。私の力量が試される状況になって、より強く “ 患者さんに満足して帰ってもらう方法 ” を考えるようになりました。せっかく来ていただいた機会を無駄にしたくないとの一心です。

患者満足度を高めるために行っている、具体的な施策を教えてください

実際に行っていることを3つに分けて説明します。

(1)毎日のミーティングで、スタッフ同士の情報共有を図る
(2)初診時には、細かな質問項目をもとに患者ヒアリングを実施
(3)患者さんが計画通りにできなくても責めない
   一緒に原因を考える

毎日のミーティングで、スタッフ同士の情報共有を図る

患者さんの要望や不満を把握するため、毎日の診療後にミーティングを行って情報共有しています。

患者さんの採血結果がどうだったか、受付で漏らした不満の内容、栄養士との日常的な話等、各部署で聞いた話をミーティングで集約し情報を各部署で共有しています。

これまでの経験から、患者さんは医師の前では「本音」を漏らされません。そして、看護師の前では少し本音を言い、受付だともっと本音を仰います。

だからミーティングでは、受付から共有される情報をとても大切にしています。

これまでに、受付から「薬が高かった」という患者さんの声を報告されて、薬剤師に相談したり、ジェネリックを使ったりといった対応をしたこともあります。

ミーティングによる情報共有は、患者満足度を高める地道な行動につながるといえます。

初診時には、細かな質問項目をもとに患者ヒアリングを実施

円滑で満足度の高い診療の鍵は、初診にもあります。

当院では、患者さんの状況や好み、病歴、薬のトラブル等を細かく項目分けしてヒアリングしています。

なかには

・当院を受診した理由
・前の医療機関に通わなくなった理由

という項目もあり、患者さんが何を求めているのかを知ろうと努めています。

薬についての意識の持ち方も、患者さんによってそれぞれです。例えば熱が出た時でも、解熱剤をすぐに処方してほしい人もいれば、副作用や過去のトラブルを警戒して慎重に考えたい人もいます。こういった患者さんの意思を細かく聞くために、初診では事前ヒアリングに30分ほどの時間をかけています。

ちなみに、この作業を私が行うと診察が回らなくなるので、看護師や栄養士にお願いし、私はサマライズしてもらったものを確認しています。

診察と合わせるとトータルで1時間ほどかけて患者さんとコミュニケーションをとっています。午前中の診療であれば、再診の患者さん複数名と、初診の患者さんは一名のみで終了するようなイメージです。

患者さんが計画通りにできなくても責めない。一緒に原因を考える

私の場合は生活習慣病の患者さんを中心に見ているので、こちらの意見を押し付けないことも大切にしています。

最初に話した通り、私は自分を「先生」というよりも「サポーター」だと思っています。だから「こうしなさい」と指示するのではなく、例えば「今こういう数値だから、さらにこんな改善をするとうまくいくと思いますよ」という案を提示しています。

行動するのは患者さん本人だから、実現しやすそうな目標や行動例をいくつか提示し、患者さんの意志で選び実行してもらう。ありきたりかもしれませんが、患者さんと同じ目線で、同じ方向を向いて治療しているような感覚です。

考えを押し付けず、患者さんの置かれた状況に自分を置いてみる。そして、目指した目標を実現できなかったり、行動に移せなかったりしても患者さんが悪いわけではありません。

そこで患者さんを責めるよりも、なぜできなかったのかを一緒に考えます。このようなコミュニケーションを診察室でもしっかりとっていくことで、患者さんの不安や不満も解消されやすくなるのではないかと思います。

最後に:患者さんとトラブルが起きた時はどんな対処をしていますか?

患者さんからのクレームがあれば向き合う。そして、向き合うことが難しそうだったら他者に相談しています。これから開業される医師のみなさんも、頼れる第三者機関を持っておくといいのではないでしょうか。

まず、例えば医療費が高い、検査のコストが高い、検査の頻度が多いといった意見があった場合。この解決策は、なぜこの薬を使用しているのか、なぜこの検査が今必要なのかという説明を丁寧に行うしかないと思います。

説明が足りないがために起こるトラブルは珍しくないので、患者さんとのコミュニケーションのとり方を考えて解決するようにしています。

第三者機関では、クレーマーや医療事故への対策を取っています。

院内で起きたトラブルは自分だけで対応するには限界があります。トラブルが起こった場合は、1人で抱え込まず外部に相談することが大切です。「こんなこと聞いたらクリニックの恥じゃないか」「こんな些細なことを聞いたら迷惑じゃないか」と悩まず、早めに相談すべきです。

私は第三者機関として、日本医師会が運営する日本医師会医師賠償責任保険制度を利用しています。最近は医師会に入会しない方もおられますが、医師会入会の大きなメリットのひとつがこの保険制度だと思います。窓口に連絡すれば、どんなことでも気軽に相談できるので助かっています。事案について親身にヒアリングしてもらい、内容によっては医療訴訟に慣れた弁護士の紹介、医師の事情を考慮した穏便な解決法を提案してくれます。

私の場合、日本医師会医師賠償責任保険制度の免責が100万円で、さらにこれを補完する保険(参考:大阪府医師共同組合 医師賠償責任保険)にも入っています。

またこれからはデータをクラウドで管理することが増えると思いますので、個人情報の漏洩というリスクもゼロではありません。クラウド型電子カルテを利用し始めたタイミングで、サイバー保険にも入りました。(参考:大阪府医師共同組合 団体サイバー保険

転ばぬ先の杖として、頼れる場所を見つけておくといいと思います。

参考:医学書院 第2939号 2011年8月1日「今,プライマリ・ケアの飛躍のとき

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福田正博 医師

取材協力 医) 弘正会 ふくだ内科クリニック 院長 | 福田正博 医師

糖尿病を中心とした生活習慣病治療に特化した、完全予約制のクリニックを運営。1988年に医学博士を取得し、同年米国ハーバード大学ジョスリン糖尿病センターへ留学。1996年より「ふくだ内科クリニック」を開設。患者さんに寄り添った医療を提供し続けている。


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執筆 CLIUS(クリアス )

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