【クリニックの集患】黒字経営を続けるポイントを医療コンサルタントが伝授

クリニック(医院)は、当たり前ですが、開業してからが本番です。

医療サービスを提供し、患者さんに寄り添うことはもちろん基本ですが、同時にビジネスとして経営を成り立たせるための視点が必要です。

とはいえ医師は、医療のプロではあっても「経営のプロ」とは限りません。

これまで、勤務医時代は医療に専念して、それ以外の総務、労務、人事、広報、金融機関・業者との交渉等については法人の各部署の担当者が行っていたはずです。開業してからは、これらの医療以外の業務についても取り組む必要があります。

クリニックを運営しながら「経営のプロ」になっていくのだと思います。

そのためには何が必要か。運営に関する知識や視点を学びながら、クリニックを黒字経営し続ける方法を、医療施設・介護施設専門のコンサルティング業務を行う、ゼロフェニックスコンサルティングジャパン株式会社・川畑 優さまに伺いました。

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【集患のコツ】集患につなげるための効果的な方法とは?

まずは、患者さんを集める方法を紹介します。ここでは以下の3つの項目にわけて、患者さんにクリニックを知ってもらい、再度足を運んでもらうためのヒントをお伝えします。

・クチコミ
 →受付や先生の接遇、診察内容等の良い部分を人づてに広げてもらう
・SEO・MEO対策
 →検索上位に位置するよう、ホームページを工夫する
・地域医療連携
 →病院と連携し、かかりつけ医としての役割を果たす

クチコミ

【良い噂が広がり、地域住民に浸透】

これまで集患といえば「クチコミ」が基本でした。

受診した患者さんが、クリニックの雰囲気、受付や先生の接遇、適切な検査、診断、さらにはお薬の効果等までを総合して、クリニックの評価をクチコミで広めます。そのクチコミを聞いた人が新たに来院し、そのコミュニティでクリニックの存在感も浸透していきます。そのため、クチコミは現在も有力な集患方法とされています。

では、クチコミが広がりやすいクリニックにはどういう特徴があるのか、患者さんが良い印象を得る要素は何なのか。

これについては後ほどご説明します。(患者満足度を上げるためにできる7つのこと

SEO・MEO対策

【オンラインで人が集まる仕組みを作る】

クチコミに加え、昨今は、ITを活用した2つの集患方法が主流になっています。まずは、自院のホームページにSEO対策を講じる方法です。

SEO(Search Engine Optimization)
検索エンジン最適化のこと。キーワード検索の結果、ホームページが上位表示されるよう、ウェブサイトの構成やコンテンツ等を調整すること。

自分の住む街や職場近くのクリニックを探す際、多くの人は例えば、「中央区 内科」「中央区 高血圧」等と検索します。

このキーワード検索の結果、自身のクリニックのホームページが上位に表示されればされるほどクリック率は高くなり、多くの方がホームページを訪れてくれます。

検索結果で上位に表示されるためには、GoogleやYahoo!といった検索エンジンに「このサイトは、上位に掲載する価値のあるサイトだ」と認識してもらう必要があります。

そこで、「地域名 + 診療科目」「地域名 + 症状」等を検索した人にとって役立つ情報を自院のホームページに掲載していきましょう。

クリニックに訪れる人が検索しているキーワードについて研究し、有益な情報を発信し続けることでSEOの改善を図れます。

ちなみに、検索エンジンの利用率は、80%以上がGoogle(PC、モバイルともに)となっています。 (参考:アウンコンサルティング「2019年7月 各国・地域におけるPCとモバイルの主要検索エンジンシェア」)

こういった意味では、Googleの検索結果に注目しながら見ていくことが得策といえるでしょう。

次にご紹介する方法は、MEO対策です。

MEO(Map Engine Optimization)
地図検索(主にGoogleマップ)で上位表示させる施策。上位表示されることで、商圏内のターゲットユーザーの目に付く機会が増え、店舗や施設の認知・来店につながる可能性が高まる。ネットからの新たな集客チャネルとして注目されている。

例えばGoogleマップでキーワード検索をすると、そのキーワードに該当するクリニックが地図上に、そしてリストとしても表示されます。

リストの表示順は、広告の次に、閲覧回数やクチコミ数、☆評価数等が試算され絶えず変動します。

クチコミ欄には「電話の対応がわるい」「先生の説明が丁寧でわかりやすい」等、患者さんの書き込みが出てくるはずです。

これまでクリニックの評価は、受診した患者さんから家族、親戚、友人へFace to Faceでクチコミとして広がっていました。

しかし最近は全く面識のない人の書き込みを見て、クリニックを決めることも当たり前になっています。

つまり、集患にはネットのクチコミも重要となってきたのです。

SEO、MEO対策をするには、ネットを介して自院の存在を認知させなければなりません。

そのためには、検索した人がたどり着くためのホームページが必要不可欠です。

そして、ホームページを作ったら終わりではなく、常にSEO、MEOを意識して更新していかなければなりません。

専門的な知識を持った人が長期間ホームページを育てていく必要があることから、SEO・MEO対策はプロに依頼することをおすすめします。

関連記事:医師がクリニックのホームページを自作し、自力でSEO、MEO対策をした例

医療連携

【病院との連携で、患者さんを紹介し合う】

一方で、オンライン上だけではないつながりも重要です。特に、他医療機関との連携は大きな集患の経路ともいえるでしょう。

現在、医療の効率化を図るために、患者さんには「かかりつけ医」を持つことが推奨されています。

クリニックや小規模病院、またはそこで働く医師が「かかりつけ医」とされ、身近な健康相談や不調についての診療を担う存在となっています。(参考・東京都医師会「かかりつけ医とは」)

そして、より専門治療が必要な場合は大規模な病院にて治療する。

専門的な治療が終われば、定期的な診療はまた「かかりつけ医」が担当し、クリニックに再度患者さんが通うようになる。

このように、医療施設ごとの適切な役割に合わせて紹介し合う関係を築くことで、集患が見込めます。


過去に働いていた大学病院のすぐ近くにクリニックを開業し、安定的な集患をしている医師もいます。

周囲の医療機関との関係性作りも見直してみるといいでしょう。

また、第30回医師需給分科会で議論された結果、2020年から「外来医師多数区域」に開業する医療関係者に対して、新しいルールが適応される見込みとなりました。

「外来医師多数区域」とは、二次医療圏の中でも外来を担う医師が多いとされる区域を指しており、厚労省が定めた「外来医師偏在指標」に基づいて算出された区域のうち、上位33.3%が該当します(東京、千葉、神奈川、埼玉、京都、奈良、大阪、兵庫等)。

この新ルールでは、地域の初期救急医療やグループ診療、医療機関では連携する必要があること、夜間や休日の救急医療体制、在宅医療、予防接種や産業医等、地域で求められている医療機能を担うことが求められています。

こういった意味でも、開業後は積極的な連携が重要です。

集患のコツをおさらい

として、これまで「人から人へのクチコミ」、「ITの活用」、「医療連携」についてご紹介いたしました。

地道な取り組みが持続的に効果を生むと考えていますが、取り組みのスタンスとして、「受け身」から「積極的な発信」が必要であり、クリニックの取り組みや院長様の顔が見える情報発信は欠かせないと考えています。

医療は、治療を行う場所であり、患者さんは、精神的な「安心・安全」を求めています。

クリニックの取り組みをガラス張りにして理解していただけるような積極的な発信が必要不可欠だと思います。

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患者満足度を上げるためにできる7つのこと

集患の方法で「クチコミ」や「MEO」の大切さを話しました。

Face to Face、もしくはオンライン上のクチコミで良い噂を広めてもらうには、患者さんに満足して帰ってもらう必要があります。

そのためにできる対策として、以下の7つを例に挙げます。内容はこれから順に説明していきます。

1、「クリニックで働く職員が満足しているか」チェックする
2、予約:窓口電話に加えてホームページでのオンライン予約で効率化
3、受付:システム導入し、セルフ受付をしてもらう
4、待合室:待ち時間の限界は30分〜60分
5、問診:エリアや診療科目の調査等、マーケット視点の質問をする
6、診察:患者さまの顔を見て話す時間を作る
7、会計:会計システムやオンライン決済システムを検討する

「クリニックで働く職員が満足しているか」チェックする

患者満足度向上について、私もよくご相談を受けることがあります。

その際に、私はまず「職員満足度調査を定期的に行っていますか」と質問します。

この質問をする理由は、サービスプロフィットチェーンという考え方に基づいています。

つまり職員が満足していないのに、患者さんを満足させることはできないという考え方です。

▼サービスプロフィットチェーンの考え方

例えばそのためには、院内サービス(職場の整備、職務設計、従業員の選抜・育成)をデザインし、質を担保する必要があります。

限られた人数で院内サービスを構築することは難しいため、我々のようなコンサルティング会社と徐々に整備することをおすすめします。

院内サービスの質を向上させるために必要な業務が現場に根付くことで、職員の満足度は高まります。

つまり、目標や自分の役割が明確になることで職員にとって働きやすい環境ができ、その結果、患者満足度の高いサービスを提供できるようになります。

もちろん定期的なヒアリングや、定量評価は必要です。

当初のデザインが陳腐化している恐れもありますので、PDCAサイクルによる見直しを重ねる必要はありますが、それによってスタッフの定着率・生産効率が向上してきます。

予約時のポイント

【窓口電話に加えてホームページでのオンライン予約で効率化】

再診の場合は、診察時に「次回は〇日〇時に来てください」で終わります。

初診時の予約は、母集団の少ないクリニックであれば窓口への電話対応でも問題ないでしょう。ホームページ上での予約ができればより効率的です。

しかし問題は、「予約システムと電子カルテとの連携」です。

初診患者の情報が電子カルテに自動で送信されるタイプの予約システムはまだまだ少ないため、予約内容をカルテに手打ちする手間がかかります。

効率化を考えると、予約システムと電子カルテが連携しているものを検討するのもひとつの手です。

例えば、以下のようなサービスです。

メディカル革命  by GMO
iTicket Smart Cloud(アイチケットスマートクラウド)
ヨヤクル
ドクターキューブ

また、担当医師で予約時間が異なったり、キャンセルのシステム対応をする場合もあるので、予約通りに進まない時に他のスタッフがどう対応するか、事前に決めておくこともおすすめします。

受付時のポイント

【システム導入し、セルフ受付をしてもらう】

受付システムを導入することで、スタッフは受付対応の時間がカットされ、他の業務に時間を回せます。

長い目で見れば、人員補充よりもシステム導入で減価償却したほうが安価で済みかもしれません。

例えば、以下のような受付システムがあります。

・AeL(アエル)
E PARKクリニック・病院
ドクターキューブ

機械に差し込んで診察券の情報を読み取ったり、QRコードを使ったりして、患者さん自身で受付が完了します。

その他、システムに頼らず、受付で直接患者さんと話すことで集患に生かす方法もあります。

病院のケースではありますが、最近では、ホテルで配置しているようなコンシェルジュを常駐させている場合もあります。

私が関わったことのある病院では、看護師長クラスの看護師をコンシェルジュとして配置していました。

患者さんからの問合せ内容はさまざまですが、バランスよく知識を有しているベテランの看護師さんがスムーズに対応していました。

クリニックでも、混雑が少ないのであれば受付システムをあえて使わず、患者さんとコミュニケーションをとり、看護サービスの改善に繋げる場として活用してもいいかもしれません。

待合室のポイント

待ち時間の限界は30分〜60分

「待ち時間の限界」に関するデータは、基礎知識として役立つのでご紹介しておきます。

私は、医療従事者として病院勤務時代に待ち時間調査をしたところ、30〜60分の待ち時間が患者さんにとっての限界だとのデータが出ました。

待ち時間は短いことに越したことはないですが、その時間を少しでも快適に過ごせるよう、

  • 患者さんに合わせた雑誌を置く
  • ドラマやテレビを流す
  • 自動販売機の横にベンチをおいて休憩スペースを作る

などの環境整備によるアメニティの拡大も有効かもしれません。 ※ドラマやテレビの放映については上映権に関する規定を守る必要があります(参考:日本医師会「待合室などにおける上映権について【注意喚起】」)

脱線しますが、恋人であれば待ち時間の限界が60〜120分ほどに延びるというデータもあります。(参考:マイナビウーマン。調査期間:2013/9/24~2013/9/30。有効回答数:男性220名、女性448名 [ ウェブログイン式 ])


ということは、医療技術で患者さんへの医療サービスの質、つまり患者さんの疾患のアウトカム(結果)の質を向上させつつ、クリニックの環境面も整備してファンを増やせば、30分〜60分の待ち時間が許容される可能性があります。

待たされ方と、クリニックに対する期待値のバランスが重要になっています。

問診時のポイント

エリアや診療科目の調査等、マーケット視点の質問をする

リニックでも病院でも共通して言えるのは、紙媒体による問診がまだまだ多いということです。

問診内容は、マーケット分析をする格好の情報であり、患者満足度を改善・向上させる有効な情報キャッチのツールだと思います。

しかし、その意識が感じられない問診をしているところが多くみられます。

住所、性別、年齢、症状・診療科目、既往歴、なぜこのクリニックを知ったのか……等、データを目的ごとに収集・分析することで、効果的な集患戦略につながります。

実際にマーケットを意識した問診票に改定し、分析すると、A地域から外来患者の何%、B地域から何%と、エリア別の患者構成も把握できます。

そのデータをもとに、来院率が多いエリアでは医師が公民館に出向き医療講演をして地域の住民にクリニックをもっと身近に感じてもらったり、弱いエリアでは、医療講演だけでなく、救急隊との合同勉強会、医師会との勉強会開催等を実施したりしたこともあります。

つまり、データ分析しやすい構成も含めて、問診票の在り方を見直す必要性があるということです。

回収後に自動でデータ化までしてくれる問診システムもあるので、そういったシステムを検討してみてもいいでしょう。

また、紙での問診の場合、スタッフが問診票をもとにパソコンに情報を打ち込む手間がかかります。

問診システムを採用し、iPadで回答できるようにすると、分析の時間、業務時間も簡略化され、リアルタイムに状況を把握できるようになるでしょう。

とはいえiPadの活用は設備投資にかかる予算等の都合でなかなか進まないと思います。とにかく「経営目線」を問診にも取り入れることが先決です。

関連記事:「Symview」と「メルプWEB問診」の担当者にWEB問診システムの導入メリット、製品の特徴を取材!

診察時のポイント

患者さまの顔を見て話す時間を作る

近年、電子カルテを導入するクリニックが一般的です。診察室でのカルテ記入時は、患者さんの満足度を大きく左右します。

やはり、患者さんの顔をよく見ず、カルテ記入のためにパソコンにばかり目を向けて診察をすると印象は良くありません。


クリニックの中には、医師の業務・作業を軽減する目的でクラークを配置するところもあります。

業務内容によっては一定の講習会・試験をクリアする必要がありますが、カルテ入力をクラークに任せれば患者さんとの対話に専念でき、診療効率もアップします。

また、クラークを雇わずにクリニックですぐにできることは、カルテ記入の時間と、患者さんの顔を見ながら話す時間のバランスを適度にとることです。

「患者さんの満足度を下げるから電子カルテは良くない」と極端に考える必要はありません。

どうしても集中してカルテ操作をしたければ、「カルテ記入だけしてしまうので、20秒ほどお待ちくださいね」等と患者さんに言えば待ってくれます。

カルテ画面だけを見ず、患者さんの目を見る時間も適度に作ることで「放置された」との印象は与えないでしょう。

会計時のポイント

会計システムやオンライン決済システムを検討する

会計システムは普及しましたが、クリニックへの導入の必要性は検討すべきです。

ただ、オンライン決済システム等は、多様化する支払い方法に順応し、利便性を高めるツールとして取り入れてみてもいいかもしれません。

特に、ビジネスマンや子育て世代の患者さんが多い場合、オンライン決済・クレジットカード決済ができるというのは、クリニックのひとつの魅力になります。

システムにもよりますが、運用費用は月5万円前後なので、経営状態を鑑みて検討するといいでしょう。

【スタッフ】看護師や医療事務が辞めないクリニックを作るには?

クリニックの経営状況を担うのは、院長だけではありません。看護師や医療事務等、職員の存在も大事です。

彼ら、彼女らが辞めることなく働き続けてくれるには、労働条件や人間関係の良好さが必要です。

私が見てきた中で、スタッフが辞めてしまうクリニックには、次のような特徴があります。

スタッフが辞めてしまうクリニックの特徴
・社会貢献につながる経営理念がない
・部署ごとのミッションや業務プロセスが仕組み化されていない
・職場で心理的安全性が担保されていない
・売上・コスト目標がない

このような特徴に該当する場合は、以下の内容を意識し、クリニック内を整備することをおすすめします。

経営理念を設定し、スタッフ全員を同じ方向に導く

実は、経営理念がない病院やクリニックは多いです。あったとしても、お飾りで実践できていないことが多々あります。

しかし、社会的使命を果たすために必要な経営理念(ミッション)等を設定すれば、皆でコミュニケーションを図りながら目標(ビジョン)を設定して取り組めます。

スタッフ全員が同じ方向を向いて動けるようになることで、クリニック全体として飛躍できる組織に変貌していくのではないでしょうか。

部署ごとのビジョンや業務プロセスを仕組み化する

患者満足度を上げる前に、職員満足度が重要であることは先述しました。職員満足度は「目標」に対する「結果」として表れます。

この目標への取り組み方を決めるには、日々の業務プロセスを仕組み化する作業が必要です。

そのためには、まず現状整理としてSWOT・クロス分析等の環境分析を行い、今年の「目標」を決定しましょう。

SWOT・クロス分析
S(Strength:強み)、W(Weakness:弱み)、O(Opportunity:機会)、T(Threat:脅威)から導いた商品自体・外部環境の特徴を掛け合わせて、実践する戦略を整理する手法。

SWOT・クロス分析の後は、バランスド・スコアカード(BSC)という手法を使って評価することをおすすめしています。BSCでは、4つの視点に分けて目標に対する評価をします。

1:学習と成長の視点

職員の人材育成についてどのような取り組みを行うか、ということです。

例えば、安全管理や感染対策に関する勉強会等を行うとして、到達目標を設定します。目標は勉強会の開催回数なのか、参加人数なのか、内容によってさまざまです。

これを現状と比較し、進捗を評価します。

以上を実行する際には、取りまとめる責任者を決め、その人に主導してもらうとスムーズです。

2:業務プロセスの視点

これは、先の「学習と成長の視点」と因果連鎖しています。

例えば、安全管理を目的とした人材育成をする際、必要な設備投資等を指標にします。

必要な設備投資とは、この例でいうとヒヤリハット件数、安全管理委員会での検討・業務プロセスの見直し件数等のことを指します。

それらの数を定め、昨年よりどの程度同様の事例が減ったのかを比較評価します。

3:顧客の視点

顧客とは、患者さんや連携している病院も含まれます。

例えば、患者さんの転倒・転落が多い事例であれば、注意喚起するための目印をつけたり、段差をなくす環境を作り直したりします。

その後、院内事故件数の指標を設定してモニタリング評価を行います。

そのほか、本来の治療目的である疾患のアウトプットの質を上げるための目標設定をし、患者満足度の向上を目指すことも「顧客の視点」の改善につながります。

4:財務の視点

トラブルなく順調に治療ができたら、次の患者さんも迎え入れることができます。

「財務の視点」としては、治療にかかる平均日数、医業収益等の指標を設定して点検・評価を行います。

以上をまとめると、SWOTクロス分析によって、クリニックの目標を設定した後、BSCの4つの視点から業務プロセスを評価する仕組みを構築していきましょう。

そうすれば、職員は日々の業務が目標に対してどう寄与しているかがわかるようになります。

これによって、職員が「私は何をすればいいのだろう?」と不安になる状況がなくなっていきます。

部署や役割ごとの目標に向けて、チームメンバーで実践する

現場のスタッフが目的意識を持って行動することは、ミッション達成の近道です。部署ごとの目標を共有し、職員みんなが目標達成に向けて行動する環境を整えましょう。

そのために院長が注意すべきは、各チームの行動に横槍を入れないことです。

チームのやり方とは違う指示を入れてしまうと、院長の意見を優先すべきか、チーム全体のやり方を優先すべきか迷ってしまいますし、スタッフのモチベーションも下がります。

チームでのまとまり、現場のやり方を尊重することを意識してみてください。

語弊がないように言っておきますが、最初の方針は院長が決め、それを職員みんなで実践します。

その際に「突然の横槍」が入ると、混乱を招きます。その時の気分でその場をしのぐやり方は芳しくありません。

クリニックを運営する上でどういった事象が起こり、どのような改善が必要か記録をしておき、全体会議等でやり方や方針を変更する組織作りが必要です。

個人のキャリア相談も行う

全社的な話だけではなく、個人のキャリアアップについても環境整備できるクリニックは、スタッフのモチベーションを維持できます。

クリニカルラダー(看護師一人ひとりの能力を高められるよう、支援するシステム)による職員の能力の可視化をしてみましょう。

入職時、2〜5年目、5年目~10年と、職位、職能、経営面の理解度について可視化し、面談を行いながら到達度を確認し、強みと弱みを理解します。

その上で、次年度の活動目標を設定すると、目標意識が薄れることなくモチベーションを維持できるでしょう。

上司が自分のことを理解してくれている、気にかけてくれているという意識の中で患者さんにサービス提供ができることは、個人にとっても、患者さんにとっても良いことだと思います。

【経営・財務】赤字経営を防ぐコツは?

赤字経営を防ぐには、診療報酬を理解してほしいです。

ご存知の通り、診療報酬は2年に1回改訂されます。

クリニックの場合、診療報酬については製薬会社や医療機器会社等から情報提供があると思います。

しかし、すべてを把握することは難しく、院長が診療報酬について勉強しきれていないケースも多いです。

最近は、電子カルテの普及により、レセプト請求もかなり楽になってきました。しかしながら、返戻が少なからずあります。

クリニックでは、診療報酬に詳しい人を雇用できるとは限りません。

かといって、院長は診察や経営業務等もあり手が回らないことが考えられます。


加算漏れを防ぐ方法や、事業収支の立て方に悩んだ場合は、診療報酬も網羅した提案ができる企業を活用してみてもいいでしょう。

医療法人化するメリットや、法人化の見極めポイントとは?

医療法人にするメリット

個人クリニック開業後、「医療法人化」について検討する人もいるでしょう。医療法人化のメリットは大きく2つあります。

社会的信用性が増し、資金調達がしやすくなる

医療法人で借入をする場合、主体が医療法人、保証人は理事長で済むため事実上一人で資金調達ができます(個人事業の場合は、院長ともう一人保証人が必要です)。

事業資金が調達しやすくなるということは、事業の拡大展開もしやすくなります。

つまり分院、介護事業、訪問ステーション等の事業展開も可能になるということです。

税務関係でお得

個人事業の際は個人用のお金も事業用のお金も、先生個人の口座で管理できました。

しかし、医療法人化することで銀行の法人口座を開設する必要があるため、それぞれの資金が明確に分かれます。

また、医療法人になると所得が「給与」として支払われるため、給与所得控除を受けられます。

仮に、医師のお子様にクリニックを継がせたい場合、個人事業のクリニックを承継する場合は多額の相続税がかかりますが、医療法人の場合は理事長の変更を行うだけで承継できます。

医療法人の懸念点

事業の永続性が求められる

一方で、法人化を慎重に検討する必要がある事項としては、医療法人は地域医療の担い手であるという観点から、事業の永続性を求められている点です。(参考:東京都福祉保健局『第1章 医療法人制度の概要』)

解散時は都道府県の認可が必要で、個人的な理由による解散は認められません。

そのため、理事長が引退を考える場合には、新しく理事長になっていただける医師か、M&A先の検討が必要になる場合があります。

また、毎年事業報告書の作成、理事会の議事録作成等も必要になります。

医療法人化を検討にする要件

では医療法人化に踏み切るには、どのようなタイミングがベストなのでしょうか。考え方は2つあります。

時間からの視点

そもそも個人開業後、すぐに医療法人化できない地域がほとんどです。少なくとも開業後1年間は個人開業で運営することになります。

また、1年目は金融機関からの借入が難しく、さほど期待した借入ができません。

そのため個人事業主として1年、ないし2年ほど運営してから法人化を検討するのがよいかもしれません。

利益からの視点

具体的には「当期純利益が1,800万円以上あるかないか」が基準になります。

個人事業主として銀行からお金を借りると、院長先生が所得税を支払った残りから、元本を返済していくことになります。

所得税は、累進課税となっていて、もっとも安い税率は15%で済みますが、最高税率は、55%にもなっています(ともに住民税も含む)。

最高税率が適用されるのは、当期純利益が4,000万円以上になった場合です。

参考:国税庁『No.2260 所得税の税率

しかし、その上の税率50%はどうでしょう。

この場合の当期純利益は、1,800万円以上に適用されます。

時間軸の話とは別の視点でいうと、これまでの経験上、当期純利益で1,800万円に到達しそうであれば順調に経営が循環していることが予想されますので、法人化を進めたほうが良いと考えます。

医療法人化する流れや申請書類とは

東京都のケースでご説明しますが、他の地域での申請でも大きく変わることはないと思います。

東京都の場合は、個人開業後1年間、法人化の申請はできません。申請後は審査に約3か月必要です。

【医療法人設立までの大まかな流れ】

・「医療法人設立の手引き」入手
・定款・寄付行為の作成
・設立総会の開催
・設立認可申請書の作成
・設立認可申請書の提出(仮受付)
・設立認可申請書の審査
・設立認可申請書の本申請
・医療審議会への諮問
・答申
・設立認可書交付
・設立登記申請書類の作成・申請
・登記完了

※医療法人設立を申請するためには膨大な量の書類を準備する必要があります。「申請書」「定款」「設立総会議事録」「財産目録」「不動産鑑定評価書」等を始めとして全部で40種類以上です。

【医療法人設立認可後の手続】

・医療法人設立認可(認可書受領)
・医療法人設立登記
・登記届
・病院(診療所)開設許可申請
・病院(診療所)開設許可
・病院(診療所)使用許可申請
・病院(診療所)使用許可
・病院(診療所)開設届

参考:東京都福祉保健局『医療法人の手引  第4章 医療法人設立認可の手順

このように、法人化には膨大な資料の用意と手続きが必要になります。

開業コンサルティング会社や、税理士等に依頼したほうがトラブルなくスムーズに進行できます。

立地選定から事業計画書作成、建築・内装設計の提案から医療機器の選定支援まで開業サポート

特徴

★3つの特徴★ 1. 「税務・会計」だけにとどまりません! <ワンストップサービス> 同グループ内に「開業コンサルティング」「経営コンサルティング」「人事労務」「行政書士業務」等を持ち、トータルでお客様のサポートができるような体制をとっております。 2. 知識が豊富!   これまで積み上げてきたノウハウに加え、スタッフは年20時間以上の研修を受講し、常に新しい知識を取り入れることで、先生方の経営のサポートへ活かしております! 3. 充実の情報提供!   ★ご提供業務★ <診療所開業支援> 開業をお考えのドクターを成功に導くためのさまざまなご提案を致します。 ・立地提案・診療圏分析 ・事業計画策定・資金計画・資金調達 ・建築・内装設計提案 ・医療機器・什器備品選定 ・スタッフ採用・事務局機能 ・宣伝広告・印刷 ・官公庁への書類作成 <税務> 経営や将来の事業展開について、経営計画の策定から資金管理、経営コンサルティング などあらゆる側面から親身かつトータル的なサポートを致します。 ・税務会計 ・税務申告 ・資産税対策 ・経営コンサルティング ・記帳代行

対応業務

開業コンセプト決め 開業予定地調査 物件選定サポート 事業計画書作成 金融機関との交渉 設計・工事業者選定サポート 医療機器導入サポート 現場工事打合せ参加 その他広報戦略サポート 保健所・厚生局届け出サポート 職員研修サポート 開業後のマーケティングサポート 医療法人化サポート

その他の業務

経理・税務顧問 経営分析 継承案件紹介

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、
ドクターが診療と経営の意思決定に集中できる環境をサポート!

特徴

ドクターが診療と経営の意思決定に集中できる環境の提供を目指すクリニックサポート。特徴としては、クリニック運営に必須なweb対策の知識と実績 、クリニック専用の組織開発ツール、提案だけでなく実際の業務遂行まで行い院長先生の時間を作る事を目的としています。case1.開業を考えているが絶対に失敗したくない。case2.診療が多忙過ぎてweb対策やマーケティングをやる時間がない。case3.スタッフの離職率をおさえて、人件費や研修費を無駄にしたくない。コンサルティング内容によって費用は異なりますのでまずはお問い合わせください。※対応エリア ・首都圏 ・愛知県 ・大阪府 ・兵庫県 (その他場合は都度ご相談)

対応業務

開業コンセプト決め 開業予定地調査 物件選定サポート 事業計画書作成 ホームページ制作サポート その他広報戦略サポート 保健所・厚生局届け出サポート 職員研修サポート 経営改善コンサルティング 開業後のマーケティングサポート

その他の業務

ホームページ制作 ホームページ運用 経営分析

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、

川畑 優

取材協力 ゼロフェニックスコンサルティングジャパン株式会社 | 川畑 優

大手医療法人で臨床検査技師として従事。新規病院開業に携わり、経営企画、新規事業立ち上げ等を経験。
その後、コンサルティングファームに転職し、全国の医療法人に対して業務改善のコンサルティング支援を行う。2018年、独立。コンサルティング事業、高度管理医療機器等の販売を行いながら、再生医療のクリニックを開設し、運営中。


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執筆 CLIUS(クリアス )

クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。


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